コツを持つ
充分な下地を施した後、乾漆粉(ガラスに漆をぬってはがし粉砕した色漆粉)を蒔いて漆で固定します。乾漆粉は黒、朱、緑、黄、青、白、姝の七色を基本に、下絵をつけた盛り上げ蒔絵、色粉を振り分けた研ぎ出し蒔絵等が、仁右衛門塗の基本です。
一度強固に乾燥した乾漆粉を蒔きつけて固定すると表面強度は通常の漆塗りと比較にならないほど丈夫になります。表面は石肌状で仕上げの研ぎ具合は調整できます。塗りが切れないよう、木地、下地から仕上げまでやや丸みを帯びて研ぎます。
そのような結果、仁右衛門塗は光沢の漆と比べ、光の反射がやや抑制されてしっとり渋く、飾金具や金箔と合わせると幽玄的な明暗対比の美となります。すり漆や白木の木地仕上げなど装飾のない実質本位な品々にも、相性良く合わせられます。
これは漆黒の漆で艶を旨とする蝋色仕上げ(蝋色では景色を写す漆黒の魅力が在りますが)とは本質的に異なる魅力です。漆を磨き鏡面光沢にするとかえって扱いづらく砂埃などに耐久性が弱くなりがちですが、仁右衛門塗は石目ゆえ使い込むと馴染んだ艶になっていきます。
このような特徴から、擦り傷がつきやすい前机、経机、上机、雛壇など、台の天板に向き、笏や払子柄など手で握る品々には、さらっとした質感で、滑り止めにもなる、程よい仕上げです。
筆返し うるみ色
※姝(うるみ)色は、漆に紅柄を入れ調合した物で、古来より紅柄は社寺仏閣などの腐敗防止や防虫のために使われてきた自然着色料です。
仏具荘厳などにおいては白木や金箔、飾金物などと対比する、しっとりした暗さが魅力ですが、真っ黒の場合よりも少し優しい、赤みがさしているなり暖かみを感じる雪国らしい色です。
黒に金よりも緊張をほぐす優しさを伝えるのに適しています。
左の写真は、姝(うるみ)色の漆で仕上げた前机の筆返しです。